琉球舞踊 取納奉行|歌詞・意味まとめ

取納奉行

歌詞

一、いぐましゅる取納奉行 何時やめんせが 頭の達 今日や浜比嘉から お越し召せん

準備万端にお迎えする取納奉行は 何時いらっしゃるのか頭達 今日は浜比嘉島からお越しになります

二、津堅バンタに登て 浜の崎見れば まこと取納奉行や お越し召せん 

 津堅の崖に登って浜(地名)の崎を見ると 本当に取納奉行がお越しなさる

三、津堅浜に着きたりば 取納奉行の召言分に 今日や女童取て呉りよ 津堅の頭の達

浜に着くと取納奉行様がおっしゃるには 今日は美しい娘達を用意しておくれよ 津堅の頭(カシラ)達

四、取納奉行の女童や 誰がなゆが 我ん頼ま 津堅神村祝女殿内の 粒抜ぎカマドー小

 取納奉行様の相手の娘は誰がなるか 私が頼みましょう 津堅神谷村の祝女殿内の 粒選りのカマドー(人名)がよいでしょう

五、あひな取納奉行の 御前に寄せれゆし 胴衣も下袴も無えらぬもの ただ行きなゆみ

 あんなに尊い取納奉行様の御前に出ますのに 胴衣も下袴もございません 普段着のまま行く訳には参りませんもの

六、胴衣貸らさは行きゆみ 下袴貸らさは行きゆみ 根殿内のパーパーや あい持ちでもの

 胴衣を貸せば行くか 下袴を貸せば行くか 根殿内のお婆さんは 物持ちですから

七、根殿内のパーパーや 女童の頭 引き引きそうてど 御宿んかい そうて行きゆん

 根殿内のお婆さんは 娘達の頭です 娘達の手を引き 御宿へ連れて行きます

八、御宿から戻り 五人女童はい行逢て 言語れや しちよて 嬉しやさびん

 お宿からの帰り 五人の娘達が打ち揃って 語らいながら 嬉しそうにしていました

九、取納奉行の御情や 匂い鬢付け香しや物 おれやか他にも 紙包ぬん数々あいびたん

 取納奉行様のお情け(心づけ)の品々は 匂いの香ばしい鬢付け油 そのほか紙包もたくさんありました

十、御役人衆の志情や 持ちかけ手巾に指輪 わたかれ役人取い持ちやる詮も立たぬ

他の役人の贈り物は 手拭いと指輪だけ 貧乏役人に接待しても 甲斐(報い)がないことです

十一、応やっさんしゅしど 銭金や儲ける むぱどむぱどすしや 尻ど打たりんど

 はいと素直に応じる人が 銭金を儲けるのです いやだいやだと言う人は 尻をぶたれるぞ 

単語集

  • いぐましゅる / 意気込んで準備する
  • 取納奉行 / 年貢や上納物を取り締まる琉球王府の役人
  • 浜比嘉 / 沖縄本島中部の勝連半島の東に位置する離島。浜と比嘉の2つの字(アザ)がある
  • バンタ / 崖端、高くて眺望できる場所
  • 祝女殿内 / 神祭を司るノロ(神女)の住む場所
  • カマドー小 / カマドーは人名、小(ぐゎー)は接尾に付ける愛称
  • 胴衣、下袴 / 琉球王府時代の婦女子の上半身と下半身の装束。正装
  • 根殿内 / 津堅島の屋号、詳細未詳
  • わたかれ役人 / 薄給の貧乏役人の意。「わたかれ」は、腹のへこんだ、痩せ細ったの意
  • 応やっさん / はいと素直に受ける人、おとなしい、優しい
  • むぱ / 否。拒絶

取納奉行について

琉球舞踊・雑踊の中でも人気の一曲。津堅島に取納奉行(税を司る琉球王府の役人)が来ることになり、島中の人々の土壇場劇がコミカルに表現される。夜伽の相手として選ばれた娘(カマドゥー小)は、その言いつけを断るが、周囲の大人たちがどうにか役人のもとへ行かせようと説得する様子などが歌われる。

三線奏者のひと言

いつの時代も納税は国民の義務?だったのでしょう。現代、税金はジワジワとあがり続けていますが、琉球の時代は取納奉行の機嫌さえ損ねなければ、税率は上がらずに済んだのでしょうか。歌に隠された思惑、駆け引き…その真相や如何に。

演奏動画