渡りざう-瀧落菅攪|解説・意味まとめ

渡りざう-瀧落菅攪

歌詞

音曲のみ

渡りざう-瀧落菅攪について

「渡りざう」は琉球古典音楽でも数少ない器楽曲の一種で、琉球舞踊「麾」の出羽の曲として使用されています。能・狂言や歌舞伎において、役者が舞台に登場する際に演奏されるお囃子「渡り拍子」の一種に「雑弾き」というものがあり、その名をとって命名されたものとする説が有力です。琉球古典音楽の器楽曲には「渡りざう」の他に組踊で役者が登場する際に使用される「按司手事」「大主手事」「羽踊手事」などがあります。

「瀧落菅攪」は近世に薩摩より伝わったとされる箏曲10曲(琉球古典箏曲)のひとつで、楽器のみで演奏される器楽曲。もともとは琉球箏曲の一曲だったものが、次第に三線でも演奏されるようになりました。古い記録をたどると、1838年の冊封の舞台(戌の御冠船)の「麾をどり」において、現在と同じく「渡りざう-瀧落菅攪」の使用が確認できます。また「菅攪」とは純器楽曲を指す名称で、「瀧落菅攪」の他に沖縄では現在「地菅攪」「江戸菅攪」「拍子菅攪」「佐武也菅攪」「六段菅攪」「七段菅攪」が伝承されています。三線の譜としては「瀧落菅攪」〜「七段菅攪」までの7曲に手付がなされており、光史流太鼓保存会の演目には「地菅攪」を使用する演目があります。薩摩から箏の曲として琉球にもたらされてのち現在に至るまで、箏曲が琉球の音楽に上手く受容されている様子がわかります。

三線奏者のひと言

日本のお正月の曲「春の海」に対して、沖縄の正月では「瀧落菅攪」をよく耳にします。「渡りざう」は三線の勘所(ポジション)に慣れる練習曲として稽古の初めの方に習う一方「瀧落菅攪」は普段使う勘所よりも、オクターブ高いポジションまで使って演奏するため、なかなか初心者には難曲です。

ハイポジションまで使って演奏される曲で思い浮かぶのは今回の「瀧落菅攪」と「ヒヤミカチ節」。個人的な意見ですが、薩摩からの箏曲の伝来に相まって「瀧落菅攪」が三線で演奏されるようになったため、ハイポジション(イ乙、イ四など)での演奏が開拓され、それが「ヒヤミカチ節」などの演奏法にもつながったのかな…と思ったり。ちなみに「ヒヤミカチ節」の作曲者・山内盛彬は琉球箏曲の演奏者でもあり、箏曲を熟知していた人です。「瀧落菅攪」のようにハイポジションまで使って演奏する曲を…!と山内が「ヒヤミカチ節」にオクターブ高く弾く演奏を取り入れたのかな?なんてうっすらとロマンが広がるのも面白いですね。

演奏動画