琉球舞踊 汀間当より|汀間当節・月の夜節|意味・歌詞まとめ

琉球舞踊 汀間当

歌詞

(汀間当節)

一、汀間と安部境の かぬ下の浜下りて 汀間ぬ丸目加那と 請け人神谷の 恋の話(サーふんぬかなーひゃーまことかや)

 汀間と安部の境のかぬ下の浜におりて、汀間の目の丸い加那と請人神谷との恋の話 (サー本当だろうか  真実だろうか)

二、神谷が云言葉や 何で言たが 明きて四五六月 呼ばしが来うくと つとめて待っちょれ (サーでぃかちゃんやーひゃー丸目加那)

 神谷は何だと言ったのか。年明けて四〜六月あたりになったら、迎えが来るので辛抱して待っていなさい。(でかしたぞ 丸目加那)

三、月のある間や 思いすんど 沙汰すんど 月の西下がれ サー思いんさんど 沙汰んさんど (サー寄てくーかんくー我腕枕)

 月が照っている間は私のことを想い、話もするが、 月が西に沈むと想いもしないし話もしない。(サー 近くに寄っておいで腕枕しよう)

四、すがてやらちゃる 我島二才達 とかく今時分 サー首里登とて 我沙汰すらど (サーやらちゃしが 呼び戻せ)

 綺麗な格好をして行かせた島の若者達は、今ごろ首里に上京していて私の噂をしているだろう。(サー行かせたのだが呼び戻せ)

(月の夜節)

一、月の夜も夜い 闇の夜も夜い ヨー 里が参る夜ど 我夜さらめ

 月の夜も闇の夜も 夜には違いありませんが、貴方がおいでになる夜が私の夜なのです

二、月の夜になれば 我ん忍でい参れ 闇の夜になれば うんじゅ忍ば

 月の夜になったら私を偲んでいらっしゃい闇の夜になったら貴方を忍んで参ります

三、行けんでや言しが 袖は取て引きゆい ヨー 真実行けんでの 肝やあらん

 行けと言いながらも袖を取のは、本当に行けと言う気持ちではないのですね

単語集

  • 汀間 / 地名。沖縄本島北部の名護市にある。
  • 安部 / 地名。名護市にある。大浦湾の北端に位置する
  • 請人神谷 / 首里王府の役人。税を徴収する取納座に勤める
  • 呼ばし / 呼びに来る人(=使い)
  • 沙汰 / 噂、便り
  • すがて / 綺麗な格好をして、身支度をして
  • 二才達 / 若者達、青年達
  • 里 / 貴方(女性が男性を呼ぶ時)
  • さらめ / であるのだから
  • うんじゅ / 貴方(敬称)

琉球舞踊 汀間当について

琉球舞踊 汀間当は、明治以降に誕生した雑踊の中でも人気の高い踊りです。王府時代の役人・神谷と汀間村(現在の名護市カヌチャリゾートあたり)の目のぱっちりとした娘・加那の恋物語を描いています。

役人・神谷が「来年4〜6月頃に加那を嫁に迎えにくるから、それまで待ってて欲しい」と言わったのにもかかわらず、迎えに来る気配が一向に無く、加那が月を見る度に神谷のことを思い出して待ち焦がれている様子を表しています。

前半の第三者の目線で描かれる部分は、神谷と加那の関係を面白く思っていない村の青年たちの立場から歌われおり、村人が噂話に花を咲かせる風景が目に浮かびます。

三線奏者のひと言

役人が地方に行って、綺麗な女性を見染める話は歌やお芝居にもよく出てきますよね。この歌の中で、ほんとに素晴らしい表現だなと思うのは「月の夜も夜い 闇の夜も夜い ヨー 里が参る夜ど 我夜さらめ」という歌詞。月夜も闇夜も夜には変わりありませんが、貴方が私の元へとやってくる夜こそ、私の夜なのです。そんなロマンチックな表現で相手を落とす女性が令和の時代にはいるのだろうか。ほんとに昔の沖縄の人の詩的感覚には脱帽です。

汀間当節・月の夜節の演奏動画