琉球舞踊の二才踊りの中でも、人気の高い演目に「二才麾(にーせーぜい)」がある。紋付姿に白いサージを頭に巻き、手には「麾」と呼ばれる小道具。若い踊り手が凛々しく舞台に立つ姿は観客の目を引き、清々しさと幸先の良さを感じさせる。
そもそも「麾」とは、武将が戦場で軍勢を指揮する際に用いた軍配のこと。敵味方入り乱れる中、指揮官はこの道具を大きく振って、味方に進退を伝えた。本来はまぎれもなく「戦の象徴」ともいえる道具だ。
ところが琉球舞踊では、この“戦場の道具”があえて異なる意味で用いられる。
戦の道具であることを理解した上で、平和を願う歌に合わせて麾を振ることで、「平和が続きますように」という祈りを、より強く際立たせているのだ。
ここには琉球らしい価値観が透けて見える。武具を用いながらも、武力を誇示するのではなく、むしろ“平和だからこそ舞うことができる”という静かな誇りが漂う。戦の道具が平和を祈るアイコンへと反転している点が、なんとも沖縄らしい。

沖縄には「言霊」という考え方がある。
口に発した言葉には力が宿り、やがて現実になる――そう信じられてきた。歌や踊りは、ただ楽しむためのものではなく、「こうあってほしい」「そうなりたい」という人々の願いそのものでもある。
であるならば、この踊りは「平和であってほしい」という願いを、あえて“戦の象徴”を使うことで際立たせているのかもしれない。
逆説的に、戦を表す道具を掲げることで、「戦のない世」「戦わない未来」を強く祈る——
そんな深意が込められているのはないだろうか。
この踊りは私たちに、「平和は当たり前ではない。平和を願う人々の想いよって保たれるもの。」と静かに語りかけてくるような気がする。そしてそれこそが、昔から今へと受け継がれてきた「琉球の心」なのではないだろうか。
朝を迎えられること、ご飯を食べれること
友人や恋人、家族と何気ない時間を過ごせること
歌や踊りを踊れること…。その全てが当たり前ではない。
悲しい歴史を乗り越えてきた沖縄。
平和であることをかみしめながら、先人が残した「琉球の心」を
次代へと繋ぎたい。
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⦅ 公演概要 ⦆
戦争で多くを失った沖縄。途方もない喪失の中で、人々を支えたのが歌と踊りでした。役者たちは「公務員」として県内を巡り、芸能を届けました。本公演では、琉球舞踊と沖縄芝居を通じて沖縄の戦後復興と芸能の歩みをたどります。トークセッションでは、YouTuberリュウカツチュウが兵庫と沖縄のつながりや、芝居小屋文化と芸能の関わりについて語ります。戦後80年、平和への願いを込めて—。
⦅ 日時 ⦆
2025年12月27日(土)
開場:12:30- 開演:13:00-
⦅ 場所 ⦆
出石 永楽館(兵庫県豊岡市出石町柳17-2)
近畿地方最古の芝居小屋、映画「国宝」のロケ地としても話題に。
⦅ 料金 ⦆
観覧無料
⦅ 出演 ⦆
金城真次
廣山えりか
玉城匠
奥平由依
髙井賢太郎
仲嶺夕理彩
入福浜天乃
歌三線 新垣俊道
棚原健太
箏 町田倫士
笛 澤井毎里子
太 鼓 堀川裕貴
沖縄民謡 仲宗根創
喜友名朝樹
ストーリーテラー
井上あすか

記事:リュウカツチュウ 町田倫士
