琉球舞踊 貫花より|武富節・南嶽節|意味・歌詞まとめ

琉球舞踊 貫花

歌詞

(武富節) 

一、でちゃよ押し連れて あたい花もいが 花や露かめて もいやならん

 さぁ一緒に 花を摘みに行きましょう いや、花は露を受けて摘むことができない

二、白瀬走川に 流れよる桜 すくて思里に 貫きやいはきら

 白瀬走川に流れる桜をすくい 花を貫いた花輪を作って 愛しい人の首にかけてあげたい

三、赤糸貫花や 里に打ちはけて 白糸貫花や ゆゐり童

 赤い糸で貫いた花は愛しい人の首にかけて 白い糸で貫いた花はあなたがもらいなさい童よ

(南嶽節)

一、打ち鳴らし鳴らし 四つ竹はらち 鳴らす四つ竹の 音のしゅらさ

 四つ竹を打ち鳴らし 鳴らす四つ竹の音のなんと美しいことよ

二、今日や御座出でて 遊ぶ嬉りしゃ 明日や面影の立ちゆと思ば

 今日はお会いして色々と遊び興じましたが 明日はその面影ばかりが立つと思うとなんとも名残惜しく思います

単語集

  • でちゃよ / さぁさぁ
  • 押し連れて / 連れ立って
  • あたい / 屋敷の裏の畑、菜園
  • もいが / 摘みに行こう、もぎ取りに行こう
  • 白瀬走川 / 白瀬川、久米島にある。走川は流れの早い川
  • ゆゐり / もらいなさい
  • かめて / 受けて、いただいて
  • 貫きやい / 連ねて
  • はきら / さしあげよう、差し上げたい

琉球舞踊 貫花について

明治時代にできた雑踊の一つで、紺地の着物を右肩袖ぬきにした娘たちが貫花を持って踊ります。歌詞や採り物ともに、古典舞踊の「本貫花」をベース振り付けられたものとされますが、雑踊「貫花」は、いかにも庶民的な振りで、娘たちの可憐さが際立つさわやかな踊りです。沖縄芝居の幕間舞踊として創作されたとされ、今日では群舞に一人踊りにと幅広い構成をみせ、とても人気のある演目です。採り物の「貫花」は紐に紅白の花(桜だといわれている)を貫いたもので、ハワイの首飾りレイのような小道具です。

秋篠宮紀子さまと貫花

学習院大学時代、沖縄に関心を持たれ志田房子氏の元で琉球舞踊をお習いになった秋篠宮紀子さま。「海外で日本の伝統文化を披露するために琉球舞踊を覚えたい」との希望で、志田氏は外国人にも喜ばれるだろうと「貫花」を教えたそう。この時、志田氏は「貫花」について「愛しい人に愛の証のように差しあげるんですよ」と紀子さまに説明したとか。それから数年後、紀子さまから志田氏に一本の電話が。「貫花を差しあげる方が決まりました。」それが秋篠宮さまとの婚約の報告だったそうです。琉球王国時代の貴人の歌のやりとりを思わせるような、なんとも素敵なエピソードですよね。

三線奏者のひと言

「武富節」はもともと八重山の竹富島が発祥で、八重山民謡の「マザカイ節」が元歌とされています。また「南嶽節」も八重山が発祥とする説があります。明治以降、沖縄では盛んに新しい踊りが生まれていきますが、元々ある古典の要素に加えて、各地で伝承されている曲や、歌を盛り込んで一つの作品を生み出していく過程はまさしく“伝統と創造”そのもの。伝統は創造があってこそ生まれていくもの。明治の人たちの“創造”が現代を生きる我々にとってみれば“伝統”な訳で。そうやって少しずつ形を変えながら文化は伝承されていくんですよね。そう考えると現代を生きる我々も、常に“創造”していく気概と努力が必要なのかもしれません。

演奏動画