歌詞
(干瀬節)
一、七読と廿読 綛掛て置きゆて 里が蜻蛉羽 御衣よすらね
七読や二十読もする 極上の綛を掛けて
愛しいあのお方にトンボの羽のような 薄い着物を作って差し上げたい
(七尺節)
一、枠の糸綛に 繰り返し返し 掛けて面影の 勝て立ちゆさ
枠の糸を綛に 繰り返し返し掛けていると
貴方の面影が ますます立つばかりです
二、綛掛けて伽や ならぬものさらめ 繰り返し返し 思ど増しゆる
綛を掛けて思い紛らわそうとするが 何の慰めにもならない
繰り返すごとに 思いが増すばかりです
単語集
- 七読と廿読 / 「読」は布を織る時の経糸の単位。一読(ひとよみ)は上下合わせて八十本「七読と二十読」は二十七読。ここでは実数ではなく、薄い極上の織物の意
- 綛 / 機織りの糸ごじらえをする際の道具。長方形。琉球舞踊「かせかけ」では左手に持って踊られる。布を織る経糸(桛糸(かせいと))という意味もある
- 蜻蛉 / トンボ、「あけず」と読む
- 枠 / 糸ごしらえをする際の道具。六角形の部分に形赤・白・青・黄・緑の五色の糸が巻かれている。琉球舞踊「かせかけ」では右手に持って踊られる
琉球舞踊 かせかけ について
「綛」と「枠」の小道具を手に、愛しい人のためにトンボの羽のように薄い上質な布を織って差しあげたいという乙女心を表現した踊り。もともとは「さあさあ節」が後ろについて3曲構成であったものが、今日では「干瀬節」「七尺節」の2曲で踊られる。琉球舞踊芸能コンクール新人部門の課題曲でもあり、古典作品のなかでも人気の高い演目。
三線奏者のひと言
僕がはじめて琉球舞踊「かせかけ」を見たのは、中学二年生の時。玉城流翔節会の玉城節子先生が踊る「かせかけ」を見たのが最初です。照喜名朝一先生の地謡にのせて、さわやかにしずしずと糸を巻く所作に、純粋無垢な乙女心が垣間見えた気がして、ほんとに17,8歳かと錯覚するような衝撃をうけました。今思えばそれが琉球舞踊の世界に興味を持ったきっかけだったと思います。抽象的な所作が多い琉球舞踊の中で、比較的わかりやすい作品で、人々を飽きさせない踊りです。